中古の竹竿
中古というと、どうもマイナス的なイメージがありますが、竹竿に関してはあてはまりません。竹竿は使っていくうちに、完成に近づいていく性質を持った製品だからです。
「へら竿は風切り刀だ」と言った天才的な竿師、孤舟(旭匠)は当初は、出来上がった竿をすぐに出荷せず、ある程度手元に置いてから店頭に出すようにしたそうです。
漆の乾燥や漆をかけた後の竹の変化を見極めるためです。もちろん、現在ではそういった時間をかけるビジネスはなかなか難しく、出来上がるとほとんどの竿がすぐに店頭に並んでしまいます。
その点、中古竹竿は漆の乾燥も進み、しっかりメンテナンスされている中古竿には新品より調整の必要や、故障が出にくいものがたくさんあります。
竹竿の漆
竹竿に使用される漆は、「湿乾燥」という、特殊な性質を持っています。
乾燥には湿気が欠かせません。ですから、ムロと呼ばれるところに入れて漆の乾燥を促します。
漆は完全に乾燥するまでには何年もかかり、いったん乾燥してしまえば大昔の漆器類がほぼ完全な形で出土するのを見てもわかるように非常に丈夫な塗料といえます。
竿の漆も同じで、新品の竿ではコミの周辺部分の漆の乾燥が進むにつれ、必ずコミ合わせの微調整が必要になります。
その点、中古竿は年月が経っているので、漆も十分に乾いているものが多くなります。きちんと整備されていれば、コミなどもしっかりしているので、しばらくは調整なども必要ないはずです。
漆の色
漆の色も塗ったばかりだと、出ない場合があります。とくに白などの薄い色は、完全に乾燥が進んでいない場合は、くすんだりして本来の色がまだ出きっていません。
こういった点でも、ある程度の時間が必要になります。竹竿は、時間経過と共に完成へと近づくのです。
削り穂と合わせ穂
古い竹竿と、現代風の新しい竹竿の一番わかり易い違いが穂先です。
昔の竹竿は、大物狙いの特別な竿以外はほとんどが「削り穂」と呼ばれる先端が糸のように細い穂先でした。
しかし、へらぶなの大型化と釣れる量の増大に適応するために「合わせ穂」という太くてしっかりした穂先の竿が増えてきました。
2枚合わせや3枚合わせなどの穂先がありますが、削り穂と違いやや先重り感があります。しかし、管理釣り場で大型を何枚も引いても曲がりも出にくく現代の釣りには合っています。
一方で、いまでも釣趣を大切にして削り穂にこだわって竿を制作する竿師さんがいるのも竹竿の楽しいところです。
竿の曲がり
曲りは、竹の繊維が縮んでいることにより出ます。それを真直ぐに伸ばすのが、「火入れ」という作業です。一流の竿師さんが火入れした素性のいい竿は、同じところはほとんど曲りが出なくなります。
中古竿は曲がるところは曲り、それを修正してあるので安心です。購入する際にしっかり曲りをチェックすれば、いいでしょう。
曲がりを治すには、火入れを行います。しっかり火入れをすれば、同じところは曲がりにくくなります。
中古竿の修理
中古竿を買う際にいちばん気になるのが、修理についてです。
その点も、大阪屋さんや紫舟といった、へら鮒専門店があるので、安心。
昔のように、問屋銘の竿は少なくなりました。ですから、へら鮒専門店ならどの竿師さんの竿でも修理してくれます。
その竿師さんが物故されている場合には、お弟子さんとか見合う技術を持った竿師さんに回してくれます。
修理期間も、火入れや胴拭き漆などは、なるべく短期間でできるように変わってきました。
ただ、漆の乾燥を伴うものや折れてしまった部分に合わせる素材を探さなくてはいけない場合は、時期によって時間がかかる場合もあります。
これは、漆の乾燥に不適な時期があったり、素材を探す時期が限られているためです。
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